ミチノスケのやったるわ!!

ぶつぶつMutter

ミチノスケとやってさんによる独り言を、掲載しているページです。中にはお宝な話がみつかるかも?(あ、あまり期待しないでください!)

夏だ!夏と言えば怖い話①「返事」

公開日: 作成者:やってさん

 これは俺が学生時代の頃に体験した本当にあった話です。

 

 夏の暑い日、自宅の部屋で窓を開けて寝ていたときの事です。

 外から二十歳くらいの女の人の声でしょうか、何か言っているのが聞こえてきたのです。

 時計を見ると夜の11時を回ったくらい。近くには飲み屋があることもあり、どこかの酔っ払った人が誰かと大声で話しているんだろうと、その時は気にしませんでした。

 再び眠りについてしばらく経った頃に、また同じ声が聞こえてきたのです。

 うるさいなぁ。

 そんなことを思っていると、

「…………ぁ~!」

 と何となく何を言っているのか聞き取れる箇所がありました。

「何か言うてる」

 聞き取れるところがあったから、というのもありますが、俺も男ですし学生です。二十歳くらいの女の人の声に反応しないなんて事はありません。もしかしたらかわいい子かもと期待もします。

 徐々に耳がなれ、聞き取れた瞬間、

「○○~!」

 一瞬止まりました。

 俺の名前が呼ばれたからです。

 どうも、先ほどからの声は俺を呼ぶ声だったようです。

 時計を見ると午前2時を少し回った頃。そんな時間に年上の女の人が自分を呼んでいる。

 正直全く心当たりがなく、少し不思議に思いました。

 せめて顔が判ればと、意をけっして窓から外を見てみました。

 声の感じからすると少し離れたところ、そう思いながら目線を声のあった方へと向ける。

 しかし、そこには街灯があるだけで人がいない。

「何やってんやろ」

 目線を向ける少し前から声は無くなり、その日は若干の気持ち悪さを感じながら、そのまま眠りにつきました。

 

 一月ほど経ち、地元の夏祭りが行われ、俺は友人と共に行くことになりました。

 夜も10時を過ぎた頃、俺は祭り会場の近くに住む友人の家へと自転車で向かい、その近くのマンションの下で他の友人たちを待っていました。

 街灯はなく、祭り囃子が遠くに聞こえる。

 とても静かな夜でした。

 

 待ち合わせ場所にしたこの建設中のマンションは、立ち入り禁止の衝立ついたてを並べられ、目隠しされていました。

 時間も時間のため作業員もおらず電気も消されており、衝立の隙間から見える場所には、駐車場まで通り抜けられる予定の玄関があるのですが、真っ暗で闇といってもいいほどでした。

 俺が吸い込まれるようなその闇をじっと見ていた事に友人が気付き、後ろから声をかけられました。

「真っ暗やなぁ、来月オープンらしいわ」

「へぇ、そうなんや。あ、そういや、この後どっから回るん?」

 友人の声に振り返りながら応え、そのまま祭りに行ってからの予定を話し合う。

 去年の出店がどうとか、今年は野郎ばっかりやから誰か女の知り合いおらんのかなど。

 学生のありがちな普通の話題です。

「○○~!」

 突然、背後から女性に呼ばれる声がした。

「……!」

 返事をしながら振り返ろうとすると、友人に顔を掴まれ止められた。

「振り向くな!返事もしたらあかん!連れてかれるで!」

 友人の顔は冷静で俺の後ろを見ていました。

 しかし、その目付きは冷静とは程遠い、焦りに近いように感じました。

 突然の事に俺はそのままの状態で固まってしまった。

 俺たちのやり取りに他の友人は気づいていません。

 何や!

「お前、今誰かに呼ばれたやろ?」

 声を小さくして俺に尋ねる友人に、

「どうしたん?」

 と返す。友人の目は俺ではなくその向こう、俺の背後に未だに向けられていた。

 そのまま何も言わず、ただ後ろを見つめる。

 そこでふと思い出す。

 俺の背後って衝立やんな。そっからの声って……何?

 よくよく思い出すと一月ほど前に自宅で呼ばれた声と、今背後の闇から聞こえた声は全く同じ。

 違いは何度も呼ばれたか、一回だけか、その程度。

「さ、みんな揃ったし行こか!」

 他の友人の声につられるように、俺たち二人はその場を後にした。

 

 よく考えるとその衝立の先、暗闇のさらに先、延長線上に俺の自宅があります。

 

 この日以来その呼び声は聞いていませんが、一体何故俺を呼んでいたのでしょうか?

 そして、もし俺が振り返り返事をしていたらどうなっていたのでしょうか?

 今となっては何も解らないままです。

 

 1つ言えるならば、とても綺麗で透き通るような声であったということです。

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